産前と産後では、体も心も変化が大きいです。
出産後の体や心の変化について、少しでも事前に知っておくだけで、自分でもその変化に気が付き、対処しやすくなるかもしれません。
子宮について
妊娠すると、子宮は鶏卵ほどの大きさから、妊娠9カ月には、長さが縦に約5倍、容積は500~1000倍になるといわれています。
その子宮も、分娩直後に急激に縮みますが、その後、数時間後には再びヘソの下あたりまで大きくなり、その後6~8週間かけてゆっくりと妊娠前の大きさに戻っていくそうです。
また、分娩直後に胎盤がはがれて傷ついた子宮内膜を止血するために子宮が急激に縮むため、陣痛によく似た強い痛みを感じます。これは後陣痛と呼ばれています。
この産後の子宮の回復は、胎盤がはがれた後の子宮内膜から排出される出血や残留物である悪露を伴いながら行われます。
腹筋について
産前の腹筋は、お腹の前面に縦に伸びる腹直筋と側面から背面にかけて胴まわりをコルセットのように覆う腹斜筋におおわれています。
お腹が大きくになるにつれて、お腹の前面にあった腹直筋は左右に移動してしまいます。そのため、出産直後はお腹の中央に筋肉がなく空洞になってしまうため、お腹に力が入りにくくなります。
骨格について
胎児の成長とともに伸ばされる子宮の損傷を軽減するため、妊娠中は脳から、筋肉や靭帯を緩めるホルモンが分泌されています。産後しばらくはこのホルモンの影響で靭帯も筋肉も緩んでいます。骨格は筋肉によって保たれているため、放っておくと骨格がゆがみやすくなり、不調の原因になります。
出産後、股関節がグラグラして歩きづらいのもこのホルモンの影響からです。産後1か月は無理に歩いたりせず、できるだけ横になって休むことが必要です。
心について
無事に出産を終えられた達成感と充実感で、体の疲れを感じないほどに気分は高揚します。そのため、心は不安定で、ハイになっていたかと思えば、急に気分が沈み涙もろくなることもあります。
この原因としては、妊娠中に活発になっていた女性ホルモンが一つとしてあげられます。分娩時をピークにこの女性ホルモンは激減し、バランスも一時的に崩壊します。
その崩壊は、一過性とはいえ、産後の6~8週間程度は更年期のような変調となります。
出産直後~1週間の過ごし方
興奮気味の心とは裏腹に、体はたくさんの傷を抱えて疲労困憊しています。
興奮しているので気力で頑張れてしまいますが、この時期の無理はその後の体調に影響します。できるだけ横になり睡眠をとることが大事です。
「体は疲れているけど心はハイ」な状態のまま退院してしまわないように、安静に過ごしましょう。
退院後の1か月の過ごし方
産後約1か月は絶対安静期間です。
家事や育児をサポートしてくれる人を探し、安静にして過ごすことで産後のトラブルを軽減し、体の回復を助けます。
頻繁に立ち上がることは体への負担が大きいため、できる限り控えましょう。また、授乳やおむつ替えは姿勢に気をつけて行いましょう。
子宮の収縮に伴う腹部の痛みや悪露、会陰の痛み、骨盤周りの違和感を抱え、体調は万全ではありません。
この時期に無理をせず、体を休められるかどうかが、今後の心身の回復を左右します。
また、家事や赤ちゃんの世話を自分で抱え込まずに、人にゆだねるという経験は、これから長く続く育児生活の中で、「人を信頼して、ゆだね、感謝する」というマインドを育む絶好のチャンスです。